この時期に決めていた日本二百名山の大無間山(だいむげんさん)
何処から見ても格好良い大きな山、少し離れて鋭く尖った小無間山。
日帰りするには、梅雨に入る前の陽の長いこの時期を外すわけにはゆかない。
気を揉んでいた台風が超高速で通過したが、その雨の翌日は気が進まない。
雨で緩んだ崩壊地の通過が気に掛かるので、登山日は、間に晴れの日を挟んで次の日にした。
大無間山は南アルプス深南部の代表格の山、一等三角点もあるのだ。
何しろ行程が長いうえに急登の山である事が有名で難関の山である事は分かっていた。
そのうえ鋸歯から小無間山の間の崩壊が年々酷く成り、現在の登山地図ではその区間が通行不能となっていてルートが切れている。
今年の最新情報は一件だけ、NETでみた。地元の方と思えるが崩壊地を通過されていた。
この報告が私の気持ちを後押ししたようなものだ。
古い案内地図のコースタイムは15時間前後だが、朝4時半出発の17時半下山の13時間を設定した。
計画通りゆかない場合のビバークや小屋泊の準備も必要だった。崩壊地通過の為には自己ビレイの用具と軽アイゼンも。
水場が無いので2.5L、足りなくなれば山頂付近の残雪を浄水器で補給する計画。
ザックは結構重くなったが、出来るだけ途中にデポしながら軽くして歩けば何とかなるだろう。
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前日はここ「てしゃまんくの里」で車中泊して登山口への道を確認した。
同じく明日登ろうとしている静岡ナンバーのSさんもおられて歓談しながら外で夕食をした。
Sさんは「小無間山まで行ければいいな」と話されていたが。
薄明るくなっていた朝4時半、食事準備中のSさんに見送られて先に出発した。ヘッデン不要の明るさだ。
水場の横を抜けると直ぐに鳥居をくぐる。
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林道を横切り上って来ると、此処が登山道の入り口。
登山届を出した。
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40分余りで雷段という平坦地
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気温は上昇しているようだけど木立の中は陽が遮られていて意外に楽だった。
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よく見かける様になる花は白いコイワカガミ
(この山一帯に咲いていた)
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標高が1500mを越えたころから急登。
上りきったところが三角点のあるP4。
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小無間小屋が見えた。
ここに水などデポし、少し軽くした。
P4からは向こうに大無間山の山頂が見える。まだ此処からは遠いな。
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P4からはアップダウンが続きP1の鋸歯まで来た。
辛いアップダウンの中、アカヤシオが咲いていて和む。
鋸歯を下りかけると左に崩落地を見ながら下る。
正面には小無間山が鋭く立ち上がっているが、
手前は大きく抉られていて痛々しく見える。
此処からは見えないが最低鞍部の所がナイフエッジなのだろう。
通過のための簡易ハーネス、ロープなどの準備をする。
たわんだロープにビレイしても気休め程度かもしれないが
谷底までの滑落は防げそうだ。
足元が滑らないようにとアイゼンを着ける積りだったが
逆にバランスが悪く成りそうな気がして、着けなかった。
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小無間山
崩壊しているザレ場の際にルートがある。
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ナイフエッジを渡り、少し上った所から振返る。
向こうはP1鋸歯
ここは見通しよく、富士山が見える
通過の為に使った用具を此処でもデポして、なお荷は軽くなった。
それでもこの急登は並みでは無い。ザレ場の横を慎重に木の根や岩を掴んで登る。
帰路の事を思うと気が重くなる所だった。
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上りきった小無間山。設定した計画の時刻より30分早く着けた。
そこには三角点と、貧相な山名板が地面に置いてあるだけ。
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小無間山では休憩無く、平坦になった道を歩きながら心臓を休める。
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近付いてきた大無間山。(唐松谷の頭から)
最後の緩やかな登りに差し掛かると残雪が出てきた。
道が分かりにくくなってきたりするが、方向が間違っていなければ直ぐに目印テープが現れる。
よく見るとテープは結構多かったと思う。
大無間の手前10分の所に展望地。ここは南アルプスがバッチリ展望出来る。
11時15分 大無間山登頂
山頂からの展望は無かったが、山頂部は広いし、計画より45分早く着けたので気持ちが随分落ち着いた。
山頂から30分程下って来た所で、小無間までと云っていた静岡のSさんが登って来た。
情報交換をしてお互いの無事を誓う。
小無間山から鞍部への下りは写真には現れない角度があり慎重に下った。
向こうはP1鋸歯
下りとは云えP1からP4までのアップダウンは体力の消耗激しく辛いところだった。
小屋まで戻ればあとは下るだけだし、気分はもう安心。
デポした荷物を詰め込んで下山へ。
でもここからの下りがまだ1100m残っている。
よくもこんな急坂を登って来たものだと思いながらも、ルンルンで下れる余裕が出ていた。
美味しかった神社の湧水を頂いて駐車地へ
やはり噂通りの難関の山に違いは無かった大無間山。
2.5L持ち上げたの水分の消費は2L。残雪を使う必要はなかった。
崩壊地は足元が狭く緩いのでバランスをとり難く、中間支点が取れない撓んだロープに頼るしか無く危険だった。
特に下山時が危険だった。ガラガラと落石の音が聞こえているのも不安を掻き立てる。
翌日予定していた青薙山は天候が不安定な予報だったので、諦めて帰阪した。
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