No,296  そこは楽園だった

七面山(1624m)(大峰山脈)
モチ田谷の沢を登る

アケボノ平
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《 2001年6月9日、日帰り  天気=曇り 》

《 メンバー    単独 》

《 奈良県大塔村、篠原林道、モチ田谷〜七面の尾根〜七面山西峰、東峰〜アケボノ平〜七面山登山口 

先日の明星ヶ岳への尾根道から七面山を眺めた時、うっとり眺めていたあの沢が気になり、早速、地図と、先日撮った七面の沢の写真をリュックに詰め込み、十津川へ車は走っていました。

何回通っても本当に長く感じる篠原林道を湯の叉まで来ると、先日と同じキャンピングカーがまた止まっていました。
この人たちはいつもここでキャンプをしているらしいのです。
この老人達2人は僕を覚えてくれていたのです。「今日はどちらへ」と声を掛けられて、気持ちよく挨拶を済ませ
石ころのガタガタ道は、どんどん高度を上げて七面山登山口の標識を超え、今度は高度を下げながら奥へ進みます。
右手に大きな谷が見えてくる。たぶんここがモチ田谷なのだろう(標高970m).
右の尾根、左の尾根、地図を睨みながら確認をしました。
谷の入り口には堰堤が立ち塞がっている。
「よう〜しやるぞ〜」と決心をして身支度を!
(8時25分)
堰堤は右岸のガレ場を登ると簡単に通過でき、枯れていると思っていた沢には水がありました。
沢の傾斜はきついものの、順調に高度を稼ぎ、時折現れる小滝もさほど苦労もなく通過出来た。

1時間余り過ぎたころ、随分急勾配と成り、厄介な滝に出くわす。直登を試みるが二、三歩で手がかりを失い
戻る。左岸の木の根っこからまた試みるが、岩の間の弱い木は、体重を支えきれず、また元に戻るしかなく、滝の下に座り込んでしまった。
「うわ〜どうする事も出来ない」不安で心臓は高鳴っている。

ここまで登る事は出来たものの、まさか下まで降りることは出来ない。落ち着かない気分だった。
やけくそでタバコを一服吹かした。
少し冷静に成ったのかも知れない、じっと周囲を観察してみた。

「そうだ、何とかして少しだけ下って、もう一度ルートを探すしかないのだ」。
いやな岩の斜面を少しずつ慎重に下ってみた。右岸に強烈なヤブではあるが、通過出来そうなところが見つかり、もぐりこんで行った。
30〜40分は進んだ感じであるが、急斜面の為か、
殆ど高度は稼げず、僅か100m程トラバースしただけであった。

そこには少しだけ空から明かりが差し込む小さな沢。天のお助けが有ったのかも知れない。
「よし、これを登るしかない」
たくさんの倒木があるが、これは助かった。倒木があるとヤブコギしなくて済むのである。斜面に添って倒れた木は、枝を足がかりに木の上を這うように登ればいいのだ。
登ってみると、ほんの100mほどの距離でシャクナゲの尾根道。
「ああ〜やっと出れた〜」
(10時35分)




   (気持ちよいナメ)

僅か高度差400m足らずの沢も2時間10分もかかっていました。
尾根道には、盛りの終わったシャクナゲの花びらが寂しく地面に散らばり、僅かに残っていた花びらも最後の力を振り絞ってしがみ付いている。花の盛りと終りでは、こんなにも雰囲気が違うものであろうか。

初めての七面山山頂(西峰)
シロヤシオは満開か散り初めか?そんなところである。
東峰を踏む。
西峰に戻ると単独者が弁当を食べていた。
「この先少し行った所に、気持ちのよい展望台があるそうですよ、行きますか?」
と声をかけ、緩やかな斜面を下った。

そこは楽園とも言えそうな、原っぱ。
大きく息を吸ってみた。
目の前に釈迦ヶ岳の斜面が、ガスの中に薄く見えていた。
残念だが山頂は見えない、でもこの雰囲気、この気持ち良さ。
この一日の間に、地獄から天国へ!
きっと忘れないだろう。

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