遠征の予定だったこの土日だが、日曜日の天気予報は雨マークが続いていた。
変わりようの無いような予報を見越して、金曜日に早々と中止の決定をした。
ところが土曜日になって日曜日の天気予報を確認すると「晴れ」に変わっているではないか、しかも広範囲に!
そうなると近場にでも行きたくなる。
以前から温めていたルートをやるにはチャンスかもしれない。それはTさんと一緒にやろうと決めていた大川口からのバリゴヤ直登ルートだった。
夕刻Tさんにメールを入れる。時を同じくして彼も同じことを考えていたらしく、即実行OKの返事が返ってきた。
あさ4時の待ち合わせだったが、Tさんは既に到着しているらしく、近くのコンビニで買い物しているうちに車のバッテリーがあがり、動けないという知らせがきた。兎に角、私もそこに到着する。
登山口、下山口それぞれに一台ずつ、計2台で行く予定をしていた訳だが、『さてどうしようか』
Tさんの車は山から帰ってから一時的にケーブル接続で動かすとして、取りあえずコンビニSにお願いして夕方まで駐車させてもらうことにした。
そして私は家に戻り、折りたたみ自転車を車に積んだ。一応登山口と下山口を自転車で繋ぐことにして車1台で出発する。
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いろいろと時間を費やしたが、下山口の岩本谷の林道脇の草ムラへ鍵の無い自転車を降ろしたのが6時ごろ。
大川口登山口から登り始めたのが6時35分だった。
植林の急斜面にはテープが付いていて踏み跡もしっかりと付いている。
調子よく高度は稼げる。
テープ伝いに登って難なく標高1200mのところまできた。前方は大きな岩山が立ちはだかるが、左から巻き込むようにテープは続いていた。
ルートも結構分かり易い、こんな調子なら山頂まで大したことも無いのではと思った。
ところが標高1300m付近でテープがなくなる。
笹薮の急斜面を這いながら登りきると、そこがP1386だった。シャツもズボンも随分汚れてきた。
ここで1本入れる。8:10−8:25
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1350m付近 |
すこし展望できる場所に出る。
右に目をやると行者還岳がイルカの背びれのように姿を現わす。8:42
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前夜、地図を見てルート取りをしていた。
丁度この辺りで等高線が詰まってくる所。
やはり前には岩壁が現れた。
『さてさて遂にでましたね』
『まあ、落ち着いてゆっくりやるか』。
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横に逃げ場はない。
正面から登ったら、ここは問題なくクリアー出来た。
右手方向に進む。
すると、直ぐに岩の斜面、それに草つきのザレた急斜面だった。
フリーで一歩二歩上るが、手がかりがない、濡れた岩と小さな木の根で体重を支えるにはあまりにも危険だった。下は数十メートルの崖だ。(9:00)
今度はTさんが左上の木を手がかりに登りかけるが、そこまでだった。急に恐さで顔が強張っている様に見えた。
『暫く落ち着くまで休もうか?』
そう云いながら考えてみた、まだまだ始まったばかり、この先はもっと難解なところがあるかも!
何もフリーで登らなくても、安全にザイルを使う方法を考えればいいのだ。
上にある木にザイルを投げて通してみた。上手くいったのでハーネスを付けて安全を確保すると急に元気が出る。
これで何とか上まで登れた。
僅か6mほどの高さなのに、こんなことで山頂まで登れるのだろうかと、正直、不安は隠せなかった。
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少し登ってピークを巻き終えたところで一瞬稜線に出たが(10:05)直ぐに小キレット。岩をトラバースして下りかけると前方には周囲が切り立った岩峰が迫る。この山が大ーだろうか?
地図によればその筈である。 |
大ーの北の苔むした鞍部の原生林 |
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その大ーの手前の鞍部もキレット状になっていた。
キレットの東側のザレを安全にザイルで下り、そそり立つ岩壁をトラバースして向こうの鞍部に到達。ここはチョット緊張する場面だった(10:50)
岩が現れてからは登ったり下ったりを繰り返して、結局のところは標高1500m、2時間弱で50m程度しか稼いでなかった事になる。
西に長く伸びたピークの東斜面を巻き50mばかり岩稜を登ってやっと目の前に目指すバリゴヤの姿を仰ぐ。
この東へ伸びた稜線を危うくそのまま行過ぎそうに成ったが間違いに気づき、引き返して真北方向のバリゴヤの頭へ向かった。鞍部では沢やさんが付けたと思える赤いテープが現れた。
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西に長く伸びたピークをトラバースしたときに見つけた岩清水滴る岩屋 |
バリゴヤの頭で |
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バリゴヤの頭は直ぐそこだった。
やったぞ、やったぞ!!!
『やっと来れたぞ〜』
緊張の糸はまだ切れてはいなかったけれど、次第に感動がこみ上げていた。帽子もTシャツもザックもカメラケースも泥だらけだったけれど、一緒に喜んで笑っているように思えた(^0^)
11:23-12:00
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稲村ヶ岳(バリゴヤの頭より) |
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バリゴヤから稲村へ向かうときにバリゴヤを振り返る |
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バリゴヤの頭の北側を下る。岩場も無く何時付けられたのかテープだらけで迷うことなどは無い。
シャクナゲのブッシュも枝が落としてあり随分歩きやすくなっていた。安堵感の中、稲村ヶ岳への稜線を楽しんで歩けた。 |
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稲村ヶ岳13:50〜14:20
稲村ヶ岳山頂より弥山・釈迦方面と大普賢岳。
そしてテーブル状の山上ヶ岳
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大日キレットからの下りは、2度も下ったというEさんに刺激されたのがきっかけだった。
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予備知識を全く入れていなかったが兎に角沢沿いに下った。
随分膝に負担が掛かる急な下りが続く。
怪しいところはザイルで下ること2度、3度。
冷や汗流して白倉林道に下りついたのが17:20だった。
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これで終わりなら良かった・・・がこれからTさんは自転車で大川口へ車の回収へ、私はテクテクとミタライの橋まで歩くことになる。
ミタライの橋着 18:05
良きパートナーあり、久しぶりにスリルと感動に満ちた濃い一日となった。
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同行したタンタンさんの記録
(参考タイム)
大川口(6:35)〜P1368(8:10−8:25)〜1500m(10:05)〜大ーを超える(10:50)〜バリゴヤの頭1580m(11:23−12:00)
〜稲村ヶ岳(13:50ー14:20)〜岩本谷の白倉林道(17:20)〜ミタライ(18:05) |
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