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鳥倉林道ゲートには30台ほどの車が駐車していた。殆どは前日の土曜日から入った人たちだろう。
ここ数年で道も整備されて、登山口までの道も舗装路になっていたので歩きやすい。
豊口コースと書かれた登山口から三伏峠までは5年前に聖岳まで縦走したときに一度歩いていたので状況は把握できていた。塩川から登った時と比較すると随分楽なコースだ。
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登り初めて暫くすると雨がポツポツしだしたので雨具を着た。
ダラダラした上りも三伏峠に近づくと風の通り道の谷筋では黄葉が始まっている。
三伏峠に着くと小屋の前には大勢の登山者が休んでいた。
雨が本降りにならない内にと素早く出発。
本谷山あたりで雨も少し多くなるが樹林帯なのでさほど支障はない。
樹林帯の鞍部を過ぎる塩見の尾根。潅木帯の登りをこなすと小屋に到着。
宿泊棟の横の小屋前で手続きを済ませていると愈々雨は本降りになる。
早めの到着と小屋泊にしたことを安堵した。
この小屋に泊まるのは初めて。定員30名ほどの小さい小屋なので大した期待はしていなかったが・・・・・・
確かに寝床は狭いが泊まり客は15名ほどだったので然程不自由は感じずに済んだ。
噂に聞いたトイレの使用方法が変わっている。
大きなビニール袋を便座に受けて使用し、袋を括って全てをヘリで回収するらしい。男子小用については毛細管現象を利用して蒸発させる方法をとっている。これほどまでに徹底した環境対策をとっているのは素晴らしい。 |
大抵はカレーライスが多いと言われている南アルプス。
夕食のテーブルを見てビックリだった。ここは京都か?
都会でもあまり食べないような手の込んだ品々、しかもそれぞれが陶器の器に上品に盛られている。
量は少なめで菜食中心だったが、これほど山で感動した食事は過去にはなかった。
若いアルバイトの男性は正座してご飯や味噌汁のお代わりを待っていた。
全ては管理人と奥さんの仕業だったようだ。
夜間は大雨とカミナリ。
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【2日目 9/15日】
朝、雨は止んでいたが足元が悪いので出発を遅らせて薄明るくなった5時の出発にした。
濡れた潅木帯なので雨具を付ける。
所々に青い空がでてくる。
塩見山頂からは雲の合間に荒川三山や蝙蝠岳も見えている。
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仙塩尾根へ。
青い空は直ぐに消え、ガスに覆われたザレ場をどんどん下る。
大きなアップダウンは無いが長い樹林帯が続く。
雨が似合う大峰奥駈道とよく似た雰囲気だ。
小雨が降ったり止んだり。
すれ違ったのは3人パーティーが一組。
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9:50 熊ノ平小屋到着。
気温は低い。寒くなったので暖かいものが欲しくなる。
ローカットシューズの中はグチュグチュになっていたので靴下を脱いで小屋の中に入る。
『小屋は明日で終わりです』と管理人は言っていたので出来る食事もカップヌードルかお茶漬けしか残っていないと言われる。
二人で熱いお茶漬けをススルと身体が温まったが、外は雨が本降りとなり少々モチベーションも下がる。 |
10:47
三国平まで登り、ここでRINちゃんとはルートを分ける。
RINちゃんは三峰岳から間ノ岳を回り農鳥小屋へ、私は農鳥小屋まではトラバースルートを辿り農鳥岳をピストンすることにした。
トラバースルートは大したアップダウンはなくハイマツの中の平行道が続き、時々濡れて赤く染まったナナカマドの葉が和ませてくれる。
ガレ場を登りきると農鳥小屋に近い稜線に出た。風と雨が強くなってきたが農鳥小屋を通過しそのまま農鳥岳へ登る。13:00
強烈な風雨で寒くなったので山頂は4分だけだった。
13:25 農鳥小屋へ戻る。気温6度。
心配していたRINちゃんは既に小屋に到着しているではないか、ブッ飛ばしたようだ。
マニュアルを読み上げるような管理人のおっちゃんの説明を聞き宿泊手続きをした。
兎に角冷えた身体と衣類をストーブで温める。
小屋の中の注意書きや説明書きが何とも滑稽であり、名物管理人の様子が伺える。
客は9名、それを見ては皆で笑い、歓談も弾んだ。
(張り紙の一部)
<天気、交通等の情報は御自分のラジオや電話でどうぞ>
<ゴミは全てお持ち帰り下さい。お持ち帰りできない軟弱な方は小屋へ相談して下さい>。
<今、来年のアルバイト希望者は申し込むこと。条件・酒を飲まない人、虫歯の痛まない人、長髪で無い人(男)、かわいらしい娘>
『夕食が出来た』と管理人のおじさんが呼びにきた。
おかずはゴッタ煮を盛ってある。見た目、塩見小屋とは大違いである。
暫くして、外に出ていた管理人のおじさんが食事中の皆に向かっていきなり、『お~い富士山が見えるぞ』と言った。
雨が上がり天気が良くなったようで、数人が急いで外にでた。
入れ替わるようにおじさんは中に入ってきて
『引っ掛かりよった』とつぶやく。
外に出て行った人達の食卓を急いで片付けにかかる。
外から戻った人たちは
『まだ全部食べて無いじゃん』
『食事は20分もありゃ済むもんじゃ』とおじさんが言う。
みんなアッケにとられるだけだった。
一人で山小屋を賄うおじさんの作戦だったのか?
みんな苦笑い(^^)
アルバイトが集まらないのは言うまでも無いところだが、私には滑稽に思えた。
【3日目 9/23】
5時、間ノ岳に向けて出発。
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次第に東の空が明るくなり雲海の上に朝日が昇る。 |
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左仙丈、奥に甲斐駒と鋸、手前に鋭く北岳
塩見と左の稜線には蝙蝠岳
奥には荒川と赤石
もっと奥には大沢、兎、聖が望めた。 |
北岳へ |
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3日目にしてやっと晴れる。
日本最高所の縦走ルート、なんとも素晴らしい展望である。
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小太郎山への道を眺める。奥には甲斐駒が |
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前日までとは打って変わって気温が高く、半袖で十分。
北岳を下り肩の小屋で小休止。
広河原から北沢峠への最終バスは2時25分を確認していた。
『時間短縮が出来たので小太郎山にも行こうか』
RINちゃんの地図では小太郎山へは往復2時間となっている。
残りの広河原までの下りの時間を計算しても20分は余裕がある。
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分岐にザックをデポして小太郎へ。
道も良く最初は快調だったが、鞍部からはちょっとしたバリエーションもあり、かなりのスピードで歩いた積もりだったけどギリギリ1時間以内で到着。
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小太郎山から眺める北岳 |
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草紅葉の中を分岐へ登り返す。
休憩を含み往復2時間は結構厳しい。
家に帰って自分の地図(2006年版)を確認すると往復2時間50分となっていた。そりゃそうだろうと納得できた。 |
折り目で擦り減った地図では小太郎山分岐からの下り、白根御池小屋までは30分。
これが大間違いであった。
道標には“白根御池小屋まで1時間30分”となっている。
『えらいこっちゃ、最終バスに乗り遅れるかもしれんぞ』
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急坂を走るように下り御池小屋へ30分で到着。
その後も早足で急いで下山する。 |
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綺麗になった白根御池小屋
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結局は急いで下りたお陰で1時間も余裕が出来、バス待ちの時間に濡れ物を干した。
初めての農鳥、仙塩尾根南部は雨だったが、オマケの小太郎山を踏むことが出来たことと、全く対照的な2つの小屋は大きく印象に残る山行となった。
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(参考タイム)
9/21 戸台(6:00)=タクシー=鳥倉林道ゲート(7:10)-登山口(7:35)-(9:05)豊口山コル(9:10)-(10:00)豊口山分岐(10:05)-
-(10:25)三伏峠(10:35)-(11:30)本谷山(11:40)-(12:40)塩見新道分岐(12:45)-(12:55)塩見小屋泊
9/22 塩見小屋(5:00)-塩見岳(6:00)-東峰(6:15)-蝙蝠岳分岐(6:40)-(7:30)北荒川管理小屋(7:35)-新蛇抜山・小岩峰(8:40)
-安部荒倉岳(9:27)-(9:50)熊の平小屋(10:20)-三国平(10:47)-トラバース道-農鳥小屋通過(12:25)-農鳥岳(13:00)
-(13:25)農鳥小屋泊
9/23 農鳥小屋(5:00)-(6:10)間の岳(6:15)-(6:55)中白峰(7:00)-(7:25)北岳山荘(7:30)-八本歯分岐(8:05)-(8:20)北岳(8:35)
-(8:53)肩の小屋(9:10)-小太郎山分岐(9:25)-(10:20)小太郎山(10:23)-(11:15)小太郎山分岐(11:25)
-(12:00)白根御池小屋(12:10)-第一ベンチ(12:50)-(13:20)広河原バス停(14:25)=バス=北沢峠=バス=戸台・仙流荘 |
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